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知れば知るほど好きになる、トレバー・バウアーという男


今季の日本プロ野球界における最大の話題といえば、横浜DeNAベイスターズへのトレバー・バウアー投手の電撃加入だろう。


バウアーといえば、MLBシンシナティ・レッズ在籍時の2020年にサイ・ヤング賞を受賞したという経歴を持つ、正真正銘の一流投手である。


そんな大物がなぜベイスターズに、という詳しい経緯については割愛する。


バウアーは5月から1軍に登板し、現在まで7試合で4勝を挙げている。序盤こそ不安定な投球が続いていたものの、交流戦に入り本領発揮。徐々に調子を上げてきている。

そんなバウアーは、日本のファンに大人気である。

なぜバウアーが日本のファンに支持されているのか。本記事では、バウアーにまつわる印象的なエピソードを交えつつ、彼の素顔と魅力について紹介する。



一流の野球選手であり「野球オタク」

バウアーは、MLB時代の10年間で222試合に登板。通算成績は防御率3.79、83勝69敗、1416奪三振という数字を残している。2017年には17勝、2020年にサイ・ヤング賞を受賞するなど、まさに世界トップクラスの投手だ。


バウアーが一流であり続けられる理由の一つに、彼の「オタク気質」なところが挙げられる。


アメリカの名門、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の出身で、機械工学を専攻していたバウアー。野球に対する向上心と探究心が凄まじく、最新技術を積極的に取り入れ、投球メカニズムの分析を行うなど、「オタク気質」な一面がある。


バウアーの決め球の一つに、横に大きく変化するスライダーがある。このスライダーの習得の経緯に彼の「オタク気質」がよく表れたエピソードがある。


インディアンス時代、縦に割れるカーブが大きな武器であったバウアーだったが、ストライクゾーンを横に広く使う為の変化球がなかった。そこで彼は、横のスライダーの習得に着手。


なかなか思うように変化せず苦戦していた時、バウアーはある技術を活用した。それが「エッジャートロニック」というハイスピードカメラだ。彼はこれを用い、スライダーを武器とする投手のリリースを撮影し、投球動作を細かく解析した。

スロー映像を参考に練習を続けた結果、ようやくスライダーが大きく横に曲がり始めたのだ。スライダーの習得で投球の引き出しが格段に増え、後にバウアーのキャリアを支えることになった。


このように、最新技術を積極的に取り入れ、自身の課題を解決するという野球に対する姿勢。これこそがバウアーの野球選手としての魅力に他ならない。



とにかくファンとの距離が近い

バウアーのYouTubeチャンネルを見たことがあるだろうか。


ベイスターズへの加入が発表された後、バウアーは新たに日本のファン向けの日本語版のチャンネル、「トレバー・バウアー」を開設した。少しぎこちない日本語の自動音声が話題になりがちだが、見どころは沢山ある。


MLB在籍時にアップロードしていた英語版の動画は、投球の技術論や野球に関する検証が主だった。対して日本語版のチャンネルでは、普段の練習風景からプライベートでの観光まで、幅広い内容の動画が投稿されている。


バウアーほどの大物が繁華街を歩けば、ファンに声をかけられることも多いだろう。実際、撮影中にファンに声をかけられても、サインや写真撮影などのファンサービスを積極的に行っている様子が伺える。


ファンとの距離の近さを象徴するエピソードがもう一つ。


6月9日から11日の3日間、京セラドームではベイスターズとバファローズの3連戦が行われていた。バウアーは9日の初戦に登板し、3勝目を挙げる活躍を見せた。


そんなバウアーが11日の試合でまさかの行動に出る。


なんと、スタンドで一般客に混じって試合を観戦していたのだ。突如現れた大物に、何も知らない周りの観客たちは混乱。TV中継ではカメラと球場グルメ片手に観戦するバウアーが映り、ネットでも大反響。


結局、大きな騒ぎになることを防ぐため警備員に連行されてしまったバウアー。後日、自身のYouTubeチャンネルにアップロードされた動画でその詳細が明らかになる。なんとバウアー自身で窓口へ行き、自費で4000円のチケットを購入していたのだ。


試合途中での退場を余儀なくされ、「日本の野球観戦の楽しさを伝えられなかった」と残念そうなバウアーだったが、この一件はファンとの距離感の近さを象徴する出来事となった。


ちなみにバウアーのYouTubeチャンネルでは、野球に対する考え方や練習法の紹介もあるので野球をしている人は、ぜひ一度見て欲しい。



実はかなりの親日家

バウアーが日本球界に興味を持ったきっかけの一つが、2009年の日米大学野球だ。


2009年に日米大学野球で日本を訪れたバウアー。東京ドームで日本代表と試合した時、日本の応援スタイルや野球に感銘を受けたそう。この出来事は、日本と日本の野球に興味を抱くようになったきっかけの一つ、とバウアーは語っている。


そしてベイスターズに入団を決めた決定打、とも言われる出来事が2019年のDOCK見学である。DOCKとは、横須賀にあるベイスターズ2軍の練習施設のこと。当時まだ完成したばかりで、最新の設備を多く取り入れた練習施設として話題になっていた。


そもそも、なぜバウアーはベイスターズの「2軍の練習施設」にわざわざ足を運んだのだろうか。


それは2019年オフのこと。今永昇太らベイスターズの投手が、シアトルにある「ドライブライン・ベースボール」という施設でトレーニングを行った際、トレーニング中のバウアーと遭遇、交流したのだ。


日本野球に興味のあったバウアーはプライベートでの来日を決断。球団の招待もあり、DOCKを訪問することとなったのだ。


また、バウアーはMLB在籍時、日本人メジャーリーガーと盛んに交流していたという。ダルビッシュ有や菊池雄星、筒香嘉智らに、日本の野球について教えたもらったことがある、と明かしている。


中でも筒香とのエピソードは意外だったので、ここで一つ紹介しよう。


バウアーの三振を取った時に行う、「ソードセレブレーション」を知っているファンは多いだろう。このパフォーマンスの由来は日本の侍だが、バウアーは当初、「右腰」に刀を差していた。


これを見た筒香が『いつもソードセレブレーションを逆にやっているね』と、本来は「左腰」に差すということをバウアーに教えたのだという。筒香のアドバイスもあり、バウアーのソードセレブレーションは完成したそうだ。



以上、バウアーの魅力を紹介した。


常に己と向き合い、成長しようとするバウアーの姿は、まさに「超一流」である。経緯はともかく、現役バリバリのサイ・ヤング賞投手が日本でプレーすることになったのだから、日本の選手は彼から多くを吸収してほしい。


バウアーの来日が日本野球にとって良い刺激となることを期待したい。



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